こんにちは、MRCの平松です。
最近では、マンションの大規模修繕工事の際に設計監理方式(コンサルティング会社と施工業者が協働して実施する工事)が主流になっています。
設計監理方式とは、設計コンサルタントが大規模修繕工事における設計・監理を担当し、施工業者が工事を実施する方式です。このように設計と施工を分割することで、工事の品質が保持できます。
さらに設計コンサルタントは、合意形成や施工業者の選定など、大規模修繕工事の着工前・竣工後も様々なサポートを提供してくれるのです。
一方、「不適切コンサルタント」の存在が社会問題化しています。記事の後半で説明しますが、マンションの管理組合側に不利益をもたらす設計コンサルタントを不適切コンサルと呼びます。
こういった問題を避けるためにも、大規模修繕工事においてコンサルタントの正しい選び方を知ることが重要です。
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大規模修繕工事コンサルタントの仕事とは?
コンサルタントの選び方を知る前に、設計監理方式の場合、彼らがどのような業務を担ってくれるのかについて知りましょう。
マンションの管理組合側がコンサルタントの仕事を把握することによって、選ぶ際にも業務内容の打ち合わせなどがしやすくなるからです。
それでは、大規模修繕工事における設計コンサルタントの仕事について解説をします。
建物診断・劣化診断
設計コンサルタントの基本的な仕事として、建物診断・劣化診断が挙げられます。
建物診断・劣化診断とは、建物の状況を把握して、現状のマンションに大規模修繕工事が必要なのか、どこを修繕すればいいのかについて計画を立てるために実施する診断です。
大規模修繕工事に先駆けて管理会社が無償で実施してくれるものもありますが、正確に建物の現状を判断するためには設計コンサルタントから診断を受けた方が良いです。
施工業者選びのサポート
建物診断を終え、大規模修繕工事の計画を立てる段階で、マンションの管理組合は工事を実施する施工業者を選ばなければなりません。
しかし、一般の方の場合、何を判断基準にすればいいのか分かりません。その結果、マンションの管理会社が勧めてくれた施工業者を選んだり、相見積もりをして一番安い業者を選んだりしがちです。
大規模修繕工事は最短でも12年スパンで実施されるような工事です。このため、素人判断で業者を選ぶのは危険です。
設計コンサルタントは、施工業者選びのサポートも行っていることが多いため、施工業者選びのアドバイスをもらうことができます。
工事内容の確認
上述の通り、設計監理方式は設計コンサルタントが大規模修繕工事における設計・監理を担当し、施工業者が工事を実施する方式です。
このため、設計コンサルタントが施工業者の内容が、計画通りに実施されているのかどうか、工事の仕上がりはどうかなどを確認します。
施工業者1社に任せる大規模修繕工事を「責任施工方式」と呼びますが、この場合は工事の質を施工者である工事業者だけに任せることになるので、工事の質は業者次第です。
設計コンサルタントが、中立的な視点で工事の質を評価してくれることが、設計管理方式のメリットでもあります。
大規模修繕のコンサルタントを依頼する会社の種類
ちなみに上記では「設計コンサルタント」と呼んでいましたが、大規模修繕工事においては下記3種類に設計コンサルタントを依頼することができます。
- コンサルタント会社
- 設計事務所
- マンションの管理会社
それぞれの違いについて、詳しく解説をしていきます。
コンサルタント会社
大規模修繕工事や建物の建築に対してコンサルティングサービスを提供しているのが、コンサルタント会社です。
この名前からも分かる通り、コンサルタントをメインに行っているので、大規模修繕工事における設計監理の知識・経験などが豊富です。
設計事務所
設計図の作成や構造調査などを行っている設計事務所にも、大規模修繕工事のコンサルティングを依頼することが可能です。
国家資格である「一級建築士」を保有しているスタッフが、設計監理を行ってくれます。
マンションの管理会社
マンション管理会社が設計コンサルティングを提供している場合もあります。
日常的にマンションの管理組合と顔を合わすこともあり、メンテナンスにも継続的に関わっていることから、親しみやすい存在ではあります。
大規模修繕工事におけるコンサルタントの選び方
次に大規模修繕工事におけるコンサルタントの選び方についてお話をします。
上記で3種類のコンサルティングを提供する会社を紹介しましたが、どの種類が良いかというよりは、下記に紹介する基準に照らし合わせて「あなたのマンションに合うかどうか」を考えた方が良いでしょう。
管理組合の考え方にマッチしているか
管理組合によって、大規模修繕工事への方向性やスタンスというのは異なります。
「修繕だけではなく改修も行い、常に建物の資産価値を高めていきたい」
「大規模修繕工事はお金がかかるので、できるだけ最低限の工事内容で良い」
同様に、コンサルタントによっても同様に方向性が異なることがあります。
最低限の修理で良いと思っているのに、必要以上の工事内容にしてしまったり、反対に修繕工事の機会に建物のアップグレードを望んでいるのに最低限の工事内容しか提案しなかったりと、このような管理組合・コンサルタント間でギャップが生まれるとうまくいきません。
コンサルタントを決める前に、管理組合としての要望をしっかりとまとめて伝えることができると、比較的にギャップは少なくなります。
同じマンションタイプのコンサルティング実績があるか
コンサルタントの豊富な実績を見て安心する前に、そのコンサルタントがあなたと同じタイプのマンションの実績を豊富に持っているかどうかを確認しましょう。
なぜなら、マンションのタイプによって修繕工事のノウハウも異なるためです。従来型の低層マンションの実績が豊富なコンサルタントが、タワーマンションの修繕も同様に得意かは分かりません。
また、同時に既存のコンサルタント先にリピーターがどの程度いるかも重要です。質の高いサービスを提供しているのであれば、必然的に継続してコンサルティングを依頼する管理組合は増えるはずだからです。
必要であれば、すでにそのコンサルタントのサービスを受けた管理組合に連絡を取ってみてもいいでしょう。
合意形成に関する知識もしっかりと持っているか
設計コンサルタントの仕事の項目では詳しく述べませんでしたが、コンサルタントは大規模修繕工事を支援するにあたり、管理組合全体の合意形成もサポートをしてくれます。
合意形成とは、マンションの大規模修繕工事に関わる内容を住民たち管理組合全体が承認をする場です。
承認をもって大規模修繕工事は進めることができるので、理事会や修繕委員会が合意形成をスムーズに行えるかどうかは非常に重要です。
しかし、大規模なマンションの場合にはなかなか意見をまとめ切ることができない場合もあります。こういった際に、合意形成を支援してくれる知見やノウハウのあるコンサルタントだと理事会や修繕委員会の負担も少ないです。
大規模修繕工事を実施するかどうか、から考えてくれるか
大規模修繕工事のコンサルティングを依頼している手前、マンション側も「修繕は実施するもの」と考えているかもしれません。
しかし多くの場合、長期修繕計画書を参考にして大規模修繕工事を検討し始めるため、マンションの現状と実態があっていない可能性も低くはありません。
建物診断・劣化診断を行った結果、今すぐには修繕を始めなくても良いというケースもあるのです。
しかし、コンサルタントとしてはすぐに大規模修繕工事が必要ではないとなると、依頼を受託しそびれてしまいます。このため、本当は必要がないのに「大規模修繕工事をするべき」と判断するようなコンサルタントも存在します。
本当に良い設計コンサルタントはマンション側のことを考え、必要がない工事を勧めることはありません。
完全な第三者として、公平・中立に関わってくれるか
工事の監理や施工業者の選定をするにあたり、コンサルタントが大規模修繕工事に公平な姿勢で関わってくれるかどうかが重要です。
冒頭にもあった通り、近年「不適切コンサルタント」と呼ばれる業者が横行しています。
不適切コンサルタントは、癒着関係のある施工業者などを採用し、施工業者からバックマージンを取得します。
施工業者はバックマージンを支払うにあたり、工事費用をかさ増しするので、結果としてマンション管理組合側が被害を被ります。
しかも、不適切コンサルタントには新規参入者が多く、監理ができるほどの知識やノウハウを持ち合わせません。
このため、マンション側は工事の質を担保するという設計監理方式のメリットを得ることもできないのです。
大規模修繕工事におけるコンサルタントの探し方
これまで、以前から付き合いのあったコンサルタント会社に継続しているという人も少なくないでしょう。
しかし、一度コンサルタントを見直してみると、依頼料が安くなったり、より充実したサービスを提供するコンサルタントを見つけられたりする可能性もあります。
そこで最後に、大規模修繕工事におけるコンサルタントの探し方について紹介します。
ぜひ、下記の方法を使ってコンサルタントを探してみてください。
インターネットで検索する
一番簡単な方法として、インターネット上で検索するという手段が挙げられます。
「大規模修繕工事 コンサルタント(コンサルティング)」などのキーワードで調べると、たくさんの会社の情報を集めることができるでしょう。
また、いくつかの業者に絞ることができたら、その会社の評判などもインターネットで調べてみましょう。
そうすることで、思わぬ悪評を見つけたり、逆に喜びの声を目にすることができるかもしれません。
レビューがサクラではなく、実在するお客様からの声だとすれば、最も信頼性の高い情報となります。
管理会社から紹介してもらう
以前の大規模修繕工事から、管理会社に紹介してもらったコンサルタントに依頼しているというマンションも多いでしょう。
マンション側に探す手間がかからないので、ついつい採用してしまいがちですが、この場合にはコンサルタント会社に競合がいないので費用が高額になってしまったり、管理会社への紹介料が余分にかかってしまったりというケースも見られます。
管理会社から紹介してもらったコンサルタントに相談すると同時に、マンション側としても別の会社に見積もりをもらい比較してみることをおすすめします。
業界誌で公募する
マンション管理・修繕に関わる業界紙にて、大規模修繕工事のコンサルタントを公募してみるのも1つの手です。
公募の場合は中立性を保ちながら選定をすることができるので、管理会社などと偏った関係のあるコンサルタントに当たりにくいです。
一方で多くの応募が来る可能性もあり、選定時には苦労するかもしれません。粘り強く1社にまで絞ることができるのであれば、おすすめの手段です。
まとめ
本記事では、大規模修繕工事でコンサルタントを正しく選ぶ方法に合わせ、コンサルタントの基本的な業務や具体的な探し方について詳しく解説してきました。
本記事で紹介したコンサルタントの選び方を参考にしていただき、皆様のマンションにとって良いコンサルタントを探していただければ幸いです。
もし、大規模修繕工事に際してコンサルタント選びに不安があるという場合は、弊社にお気軽にご相談ください。
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