大規模修繕工事の進め方を11ステップで図解|注意点・成功のコツも解説

こんにちは、MRCの平松です。

マンションの大規模修繕工事を検討されており「ゼロからどのように進めていけばいいのだろうか」とお悩みでしょうか?

本記事では大規模修繕工事の進め方について、委員会の発足〜竣工までの手順をイチからご説明。この記事を読めば、大規模修繕工事のプロセス全体を把握することができます。

 

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大規模修繕工事とは

大規模修繕工事 進め方

そもそも大規模修繕工事とは、マンション建物の経年劣化などを修繕する大規模な工事のことを指します。住民の安全性を担保することはもちろん、マンションの資産価値を維持するためにも必要不可欠の工事です。

一般的に大規模修繕工事は10年〜15年スパンで行われることが多いですが、建物の状況によってその都度専門家と相談しつつ修繕時期を決めていくことが好ましいでしょう。

修繕工事と改修工事の違い

また、よく混同するものとして改修工事があります。修繕工事は建築当時の建物の機能を回復することを目的とした工事である一方、改修工事は建物の機能のアップデートを行う工事を指します。

時代によって建物に求められる機能は変わります。例えば、エレベーターやバリアフリー機能、立体駐車場の設置など、これまでになかった設備の取り付けは改修工事の範疇となります。

大規模修繕工事の進め方

大規模修繕工事 進め方

それでは大規模修繕工事の進め方について、11のステップに分けて見ていきましょう。

1. 修繕委員会の発足

初めに管理組合の中から修繕委員会のメンバーを選定し、委員会を発足させます。

この際、すでに発足済みの理事会が修繕計画を主導する場合もあります。しかし、理事会はすでに組合運営業務も担っているため、修繕委員会の役割まで担当すると業務負担が大きくなってしまいます。このため、修繕委員会を別途発足することをおすすめします。

修繕委員会の役割

修繕委員会を別途発足する場合には、理事会の諮問機関としての立ち位置になります。

このため、修繕工事の内容検討や診断調査の立ち会い、定期総会の開催や施工業者との打ち合わせなどは修繕委員会が行い、修繕委員会からの提案の決裁者となるのが理事会です。

修繕委員会のメンバー選定のコツ

先述の通り、修繕委員会の発足は必須ではありませんが、理事会の業務量負担が大きい場合には設置を推奨します。メンバーには、過去に大規模修繕工事に携わった経験のある人や建築業界への知見を持っている人がいると心強いでしょう。

2. 発注方式の決定

大規模修繕工事を行う際、主に2つの発注方式があります。

  • 責任施工方式
  • 設計監理方式

責任施工方式とは、大規模修繕工事に関するプロセスを施工業者1社のみで進める方式です。また設計監理方式は、施工業者の他にコンサルタント会社が介入し、2社で工事を進める方式です。

それぞれのメリット・デメリットについて紹介します。

責任施工方式・設計監理方式のメリット・デメリットは表裏一体

責任施工方式のメリットは、全作業を一貫して一社に任せることができるため、工事に一貫性が保たれます。施工業者とコンサルタント会社が食い違うと、打ち合わせと工事内容が異なる場合もあります。このようなリスクを避けることができます。

また、コンサルタント会社に依頼するとコンサルタント料が発生しますが、責任施工方式の場合には修繕工事費用のみとなります。

一方、責任施工方式は工事に第三者が介入しないため、工事内容・質ともに不明瞭で、施工業者任せになってしまいます。コンサルタント会社が介入することで工事の質が担保され、目的通りの工事が行われるのです。

立ち会う修繕委員会のメンバーに工事に詳しい人がいなければ、責任施工方式の出来不出来を確認することは難しいです。安価なことを理由に責任施工方式を選んだとしても工事の質が低ければ後々費用がかかることもあり得ます。

このような理由から、責任施工方式・設計監理方式のメリット・デメリットは表裏一体だと言えるのです。

責任施工方式のメリット責任施工方式のデメリット
・費用が安く収まりやすい
・工事内容に一貫性がある
・工事の質が施工業者任せになってしまう
・工事内容に問題があると、後々追加の修繕工事がかかることもある
設計監理方式のメリット設計監理方式のデメリット
・工事の質が担保される
・第三者の目で工事のプロセスをチェックしてもらえる
・修繕委員会の意見を施工業者へ具体的に伝えてもらえる
・コンサルタント料が別途発生する
不適切コンサルタントの存在

本当に信頼のできる施工業者がいない場合は、設計管理方式がおすすめです。

3. 劣化診断の実施

次に、大規模修繕工事の工事範囲・工法選定のために劣化状況の診断を行います。劣化診断では、以下のような点が確認されます。

  • どの箇所に劣化症状が生じているか
  • 修繕箇所の優先順位
  • そもそも大規模修繕工事がすぐに必要か

ここでポイントなのは、劣化診断が大規模修繕工事を行うことが前提になされていないかという点です。修繕ありきで劣化診断が行われると適切な時期に工事を実施することができません。

しかし、管理会社や施工業者に劣化診断も一任してしまうと、管理会社は建物の現状に沿わない紋切り型の判断をするため、施工業者は実施前提で劣化診断を行うため、現状にそぐわない判断になりがちです。

この点からも、劣化診断の段階からコンサルタント会社に介入してもらい、第三者の目から正しく確認をしてもらうことをおすすめします。

4. 修繕計画・修繕予算の検討

劣化診断の結果、大規模修繕工事が必要という判断になった場合、 修繕計画・修繕予算の検討を行います。診断結果に基づき、修繕の優先順位が高い箇所から大規模修繕計画に組み込んでいきましょう。

また、修繕の必要性が低い箇所については施工会社・コンサルタント会社と相談した上で先送りにし、余剰予算で改修工事を行うこともおすすめです。建物の機能をアップデートさせることは資産価値の向上、現在の住民の満足度向上にも繋がり、工事に対して協力的な姿勢を生み出すことも期待できるからです。

修繕積立金が不足している場合

一方で、大規模修繕工事のために貯蓄していた修繕積立金が不足している場合も考えられます。この場合には、住民からの一時金の徴収や工事内容や工事時期の全体的な見直しなどが必要です。

また修繕予算が適切なものかどうかについて、コンサルタント会社に確認してもらうという手段もあります。劣化診断の結果から工事内容が決定されますが、場合によっては本来不要な箇所の工事内容が盛り込まれていたり、相場よりも高額な設定がなされている場合もあります。

このような修繕予算の嵩増しは、大規模修繕工事に関する知見を持ったメンバーが修繕委員会に在籍していない限りは見抜くことは難しいです。コンサルタント会社などの専門家に第三者の立場から介入してもらい、必要以上に高額な修繕予算の是正をしてもらうことをおすすめします。

5. 施工業者の選定

修繕計画・修繕予算が確定したら、次に施工業者の選定を行いましょう。一般的には、複数の施工業者から工事内容をもとに見積を出してもらい、比較します。下記に選定プロセスの詳細を記載しますので、参考にしてください。

5-1. 公募の実施

まずは施工業者を募るために公募を行いましょう。公募はインターネット・専門誌・マンションの掲示板など各所で実施することができます。見積が数社分集まったら次のステップに進みましょう。

5-2. 書類選考

集まった見積書をもとに書類選考を行いましょう。見積価格はもちろんのこと、会社経歴書・修繕工事の実績表なども参考に、大規模修繕工事が任せられそうな施工業者を数社まで絞っていきます。

5-3. ヒアリングの実施

書類選考で施工業者を数社まで絞ったら、ヒアリング(プレゼンテーション)を行いましょう。ここで重要なのは費用面ばかりに注目しないという点です。施工業者の選定基準を費用にしてしまうと、「安かろう悪かろう」になりやすいです。

工事の質が低いと施工直後に追加で修繕が必要になったり、大規模修繕工事の周期が短くなったりと良いことはありません。

これまでのマンション修繕工事の実績や工事への姿勢、修繕委員会との相性、財務状況、アフターサービスなど、俯瞰的に施工業者を評価した上で選定しましょう。

6. 定期総会(臨時総会)の開催

施工業者とともに大規模修繕工事の詳細を決定したら、定期総会(臨時総会)を開催しましょう。

管理組合員に対して、どのような目的でどのような修繕工事(改修工事)を行うのか、どれくらいの期間がかかるのか、どの施工業者・コンサルタント会社に依頼するのかなどの詳細を報告する会です。

この総会で管理組合員からの承認を得ることができれば、正式に大規模修繕工事を業者へ発注することができます。

管理組合員から承認を得るポイント

大規模修繕工事は管理組合員から承認を得て初めて実施することができます。工事のために集めてきた修繕積立金を有意義に使うことを伝えなくては承認を得ることはできません。

このため何を置いても、修繕工事の透明性を担保することが大事です。劣化診断の結果から得られたマンションの劣化状況、それに応じた修繕工事の内容、予算の使い道や施工業者の選定理由などを明確に伝えられるようにしましょう。

また、総会で急に修繕工事について報告をすると反発を招く恐れもあります。総会に向けて広報誌で現状を伝える、事前の集会で管理組合員の意見を集める等を行うことで、承認を得られるようになるでしょう。

管理組合内での合意形成もコンサルタント会社に依頼することができます。大規模修繕工事に向けた合意形成にご不安な場合は、設計監理方式を採用すると良いでしょう。

7. 契約

管理組合内で大規模修繕工事の計画に合意が得られたら、施工業者と契約を締結しましょう。契約以降、施工業者は工事の準備を始めます。修繕委員と施工業者は重要なパートナー関係になりますので、密に連携していきましょう。

8. 工事説明会の開催

着工1ヶ月前のタイミングで工事説明会を開催します。ここでは管理組合員に向けた工事期間中の注意点や工事内容の概要を伝えることになります。

すでに合意形成を経ているため、ここで説明の中心となるのは生活の安全上留意すべき点です。日常生活にどのような影響があるのかを説明し、納得してもらうことで、修繕工事期間中に不満が募ることを避けることができます。

また、施工業者・修繕委員会側からの一方的な説明に始終するのではなく、居住者からの意見や不安の声も集めておきましょう。集まった意見は業者側と共有し、修繕工事に生かすようにしましょう。

マンション周囲の理解も重要

大規模修繕工事中は工事による騒音、工事車両の出入りなどで周囲にも少なからず影響を及ぼすことになります。このため、マンション周囲の理解も重要となります。近隣が居住区の場合には挨拶などを行い、工事期間も同時に伝えておきましょう。

9. 着工

いよいよ着工です。事前に修繕計画を綿密に立てたとしても、マンションの現状や天候などの外部要因によって計画通りに進まないことも少なくありません。

このため、大規模修繕工事の期間中には定期的に施工業者・コンサルタント会社・修繕委員会で集まる機会を設け、その都度、工事の進捗や変更箇所の確認、マンション住民や周辺地域からの声の共有などを行いましょう。

管理組合員への情報共有もお忘れなく

また、工事の進捗や直近の予定などについては住民でもある管理組合員への共有を積極的に行いましょう。工事期間中は洗濯物が干せない、出入りが制限されるなど少なからず生活に影響を及ぼしており、見通しを持ってもらうことで不満を最低限に抑えることができるからです。

直近でどのような工事を行う予定なのかについて記載したチラシをその都度配ることで情報の共有が可能です。修繕工事に対して理解・協力が得られるように努めましょう。

10. 竣工検査の実施

大規模修繕工事が完了したら、竣工検査が実施されます。施工業者・コンサルタント会社・修繕委員会などの主要メンバーで修繕工事の仕上がりを見て回り、工事内容との差異や不備がないかを確認しましょう。

この段階でもし不備があった場合には改めて修繕を行い、再び該当箇所のみ竣工検査が実施されることになります。

また、この際に工事の詳細が記録された竣工図書が施工業者から修繕委員会に渡されます。この資料は次の大規模修繕工事や継続して行っていく建物のメンテナンスにも役立ちますので大切に保管しておきましょう。

11. 引き渡し

竣工検査が無事に終わったら、足場などを解体して引き渡しです。修繕委員会は今回の大規模修繕工事の総括を行い、次回の工事の際に生かせるように記録を残しておきましょう。

大規模修繕工事の進め方の相談ならコンサルタント会社へ

大規模修繕工事で最も重要なのは、信頼のできる施工業者を選定するところです。修繕委員会のメンバーに詳しい人がいない場合には施工業者に一任することになるため、業者によって工事の出来不出来が大きく左右されることになるからです。

良い施工業者を選ぶことができれば、マンションの修繕のプロセスを一緒に伴走してくれる良きパートナーとなるでしょう。

弊社はコンサルタント会社として、業者の選定・工事内容の是正・合意形成のアドバイスなど、大規模修繕工事が滞りなく行われるためのサポートを提供しています。ぜひ大規模修繕工事の進め方にご不安がある場合にはお気軽にお問い合わせください。

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