データから見る大規模修繕工事の予算|全体・戸・床面積あたりで解説

こんにちは、MRCの平松です。

マンションの大規模修繕工事にはそれなりの予算が必要であることはご存知でも、具体的にどれくらいの費用がかかるのかについて知っている方はそれほど多くありません。

住民や管理者にとっては必要不可欠な工事ですが、その心理を利用して相場よりも高額な予算見積もりを出してくる施工業者もいます。

「なぜこれだけの費用がかかるのか?」という理由を知らなければ、施工業者に提案されるがまま、不要な箇所まで大規模修繕工事をしてしまうということも。

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大規模修繕工事の予算を知る必要性

大規模修繕工事 予算 必要性

今、この記事を読んでくださっているあなたが修繕委員会や理事会、管理組合員(住民)のどの立場にいらっしゃったといても、大規模修繕工事の予算を理解しておくべき理由があります。

理由を簡単に言うと、大規模修繕工事の予算が嵩増しされる問題が多発しているからです。適切な予算を知っておけば、相場よりも高い見積もりに気づく事ができます。

本項では、大規模修繕工事の予算が嵩増しされる原因について以下の2点を解説します。

  • 施工業者へ一任する責任施工方式
  • 不適切コンサルタントと施工業者の癒着

施工業者へ一任する責任施工方式

工事の主な発注方式は、施工業者に一任する「責任施工方式」と、2社に工事を依頼する「設計監理方式」の2つです。

責任施工方式は見積もり〜竣工まで全ての工程を1社に依頼するため、不要な箇所を工事内容に盛り込まれる等、大規模修繕工事の予算嵩増しのリスクがあるのです。

またそのような不正がないとしても、工事品質を施工会社のみが知り得る状況になるため、品質の担保がきちんと為されない可能性があります。その結果として、建物の劣化が早まり修繕周期が縮まる等、長期的に見て費用が掛かります。

国土交通省においても、責任施工方式に関して以下のような記載を行なっています。

設計と施工が一体化するため、工事内容と費用内訳の関係が不明瞭となりやす
く、また、技術的知識が施工会社のみに偏るため、正しい判断で必要な工事内容を定め
るという点で問題となる場合があります。この方式を採用する場合は、検討結果の適切な
情報開示や検討内容ごとの費用内訳の提示等を受けることが重要となります。
(第1章 マンション管理の基本と改修による再生の重要性 – 国土交通省)

不適切コンサルタントの存在

では、もう一方の「設計監理方式」であれば安全なのかと言えば、そうも言い切れません。なぜなら、施工業者と癒着してバックマージンを得る不適切コンサルタントが存在しているからです。

これは稀なケースではなく、国土交通省が報道発表資料に掲載するレベルの社会問題です。

設計コンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様の設定等に基づく発注等を誘導するため、格安のコンサルタント料金で受託し、結果として、管理組合に経済的な損失を及ぼす事態(マンション大規模修繕工事に関する実態調査を初めて実施 – 国土交通省 報道発表資料)

せっかくコンサルタント費用を支払っても、裏で特定の施工業者と繋がっていれば、設計監理方式最大のメリットである工事プロセスの透明化は実現しません。これらの理由から、適切な大規模修繕工事の予算を知っておく必要があるのです。

大規模修繕工事の予算(全体・戸あたり・床面積あたり)

大規模修繕工事 予算 国土交通省

ここまで大規模修繕工事の予算を知るべき理由について解説しました。

マンションは衣食住の「住」を司る重要なイベントですから「ある程度、お金がかかっても仕方がない」と、多くの方が考えています。そのお考え自体は間違いではありませんが、適切な予算をご存知でないと不必要な費用まで支払ってしまうリスクがあるのです。

以降、大規模修繕工事の予算について全体・戸あたり・床面積あたりの3つに分けて見ていくことにしましょう。

調査概要

調査対象直近3年間に受注したマンション大規模修繕工事に関する設計コンサルタント業務の実績を有する企業
調査期間平成29年5月~7月にかけて実施
調査範囲全国各都道府県の建築士事務所協会に登録された事務所及びマンション関連団体会員社等から、マンションの設計・管理等に関する企業を対象範囲として抽出し調査を実施
調査規模134社944サンプル

大規模修繕工事の予算:全体

大規模修繕工事の予算:戸あたり

大規模修繕工事の予算:床面積あたり

大規模修繕工事の費用を抑えるコツ

大規模修繕工事 予算 抑えるコツ

ここまで大規模修繕工事の予算を項目ごとに見てきました。国土交通省が134社以上の修繕工事を調査したデータのため、ある程度の信憑性があると考えられます。ご自身の建物の条件と照らし合わせることで、大規模修繕工事にかかる費用も大まかに見えてくるでしょう。

本記事では最後に大規模修繕工事の費用を抑えるコツを紹介します。修繕時に行うものから日常的なコツもありますので、各自のフェーズに応じて実施していただければ幸いです。

信頼できる会社への依頼

大規模修繕工事の施工業者を決める際、多くは複数社から見積もりを取り寄せて比較を行います。この際、費用を主軸に置く傾向が強いと感じますが、この業界でも「安かろう悪かろう」の原理は確かに存在します。

多少予算が嵩んだとしても、アフターサービスの充実度や工事品質の担保、管理組合の意図の吸い上げや(当然ですが)不正行為をしないことなどが重要です。そのため、比較を行う際には会社の実績や口コミなどを重視することをおすすめします。

大規模修繕工事をきちんと行えば1回あたりの費用は高くとも、建物の寿命が伸びる等、長期的に見て予算を抑えることに繋がります。大規模修繕工事は10年以上の周期で行われるため、長期的なマンションマネジメントの視点を持つ必要があります。

マンション調査で現状を確認

大規模修繕工事の内容を決定するため、工事前に建物の調査(目視・打診など)が行われます。この段階から理事会・修繕委員会はしっかりと立ち合いを行い、納得がいく報告を受けられるようにしましょう。

適切な予算で工事を行ってもらうための第一歩は、持ち主自身がマンションの現状を理解することです。管理会社・施工業者などに相談し、診断結果についても明確に報告してもらえるようにしましょう。

見積もりを受けた後の工事内容見直し

調査後に大規模修繕工事の見積もりが提出されます。予算を上回っている場合には、修繕積立一時金を徴収するという手段もありますが、優先度の低い工事内容については、修繕ではなく次回の修繕工事まで維持できる対策に切り替えるという手もあります。

最優先すべきは、住民の安全性を担保するため、建物の寿命を伸ばすための工事です。この部分を先延ばしにすることはできませんが、緊急性が低い箇所に関しては修繕積立金が貯まり次第工事でも良いです。

工事内容の優先度については修繕委員会・理事会が独自に判断するのではなく、責任施工方式であれば施工業者に、設計監理方式であればコンサルタント会社へ相談しましょう。

日々のメンテナンス

小規模・中規模の修繕工事を定期的に行うことも重要です。特に風雨にさらされる屋上部分や外壁など、水回り機能のポンプなどは共用室内部と比べると劣化速度が早いです。

浸水などに気づかず大規模修繕工事まで放置されている…という建物も少なくありませんが、これでは建物の劣化が深刻なものとなり、次回の大規模修繕工事の費用も格段に上がる場合があります。

このため、定期的にメンテナンスを行うことは結果として修繕工事の予算を抑えることに繋がります。

また、修繕時に従来の素材から高機能素材に取り換えることもおすすめです。耐久性が高い素材に置換することで、修繕周期が長くなります。

設計監理方式の採用

初めに設計監理方式は二社に依頼するため、施工費用の他にコンサルタント費用がかかると述べました。このため、大規模修繕工事の予算を抑えるコツとしては不適切のように感じられるかもしれません。

しかし、設計監理方式のメリットについては「競争入札等の競争原理を導入して施工会社を選定することができ(第1章 マンション管理の基本と改修による再生の重要性 – 国土交通省)」ると国土交通省でも述べられている通り、思いの外、低い費用で実施することができるのです。

また先述の通り、工事内容・工事費の透明性の確保、工事品質の担保などのメリットもあることから、長期的に見ると大規模修繕工事の予算削減を実現できます。

大規模修繕工事の予算はコンサルタントにご相談を

今回の記事では、国土交通省のデータをもとにした大規模修繕工事の適切な予算から修繕工事の適切な予算を知っておくべき理由や工事費を抑えるコツなどについても解説をしました。

まずは適切に大規模修繕工事の費用を知るところから始め、発注方式の選択、信頼のできるパートナー(施工業者・コンサルタント会社)探しなどをしましょう。

良きパートナーが見つかれば、難しいと言われる管理組合内の合意形成や、修繕委員会の要望を施工業者に正しく伝えること、意図通りの修繕が行われることなど、より良いプロセスを歩むことができるようになります。

住民の安全性の確保・建物の資産価値維持など、大規模修繕工事は様々な面から見て重要なイベントです。本記事が読者であるあなたの意思決定に役立ちますことを心より願っております。

マンション大規模修繕工事、長期修繕計画、セカンドオピニオンに関するご相談はこちらまでお問い合わせ下さい。

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