マンションの修繕工事でも実施される外壁塗装。もちろん外観を保つ意味でも重要な工事ですが、マンションの劣化を防ぐという目的もあるものです。
基本的には12〜15年スパンで行われる大規模修繕工事で実施されることが多い外壁塗装ですが、マンションの劣化状況によってはさらに細かい間隔で行う必要が出てきます。実施時にはポイントを押さえ、マンションの資産価値を維持していくことが大切です。
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マンションの外壁塗装とは?
マンションに限らず、建物の外壁というのは年数が経つごとに汚れたり、綻びたりと、経年劣化が進行していきます。外気や日光、風雪に最も晒されている部位なので、外壁の損傷を避けることなどできません。
外壁塗装を怠ることによってマンションの外観が悪くなり、結果として入居希望者が出てこなくなったり、外壁の崩落などによって住民・近隣住民の生活に危険を及ぼす可能性すらあります。
このような理由から、マンションの外壁塗装は非常に重要な工事です。本項では、外壁塗装工事を行う目的や実施のタイミングなどについてわかりやすく解説をしていきます。
マンション外壁塗装の目的
前述の通り、マンションの外壁塗装工事は大規模修繕工事のタイミングで実施するところが多いようです。目的として一番に思いつくのは、マンションの外観を美しくすることではないでしょうか。
住民はもちろんのこと、入居を検討している人からしても一番に目につくのはマンションの外観です。美観が保持されている建物であるか否かは空室率にも大きな影響を与えますので、そういった意味で外壁塗装工事を実施しようと考えている修繕委員会・理事会の方も多いでしょう。
しかし、それだけではなくマンションの保護という観点でも外壁塗装は重要な工事です。外壁自体はコンクリート・セメント・木材などの素材が使用されていますが、その素材自体には風雪を防ぐほどの耐久性はありません。このため、外壁素材が剥き出しの状態では劣化が早まってしまうのです。
このような理由から外壁塗装を行い、保護を行います。塗料を塗ることによって、紫外線や風雪などの劣化原因から外壁の素材が守られることに繋がります。しかし、塗料も経年劣化によって無くなってきますので、修繕工事の際に外壁塗装工事が行われるのです。
マンション外壁塗装のタイミング
国土交通省が発表した「平成30年度マンション総合調査結果(平成31年4月26日公表)」によると、大規模修繕工事における項目の実施割合は以下の通りです。
- 外壁塗装工事 88.0%
- 鉄部塗装工事 77.5%
- 屋上防水工事 73.2%
- 床防水工事 61.1%
これを見ても分かる通り、外壁塗装工事は大規模修繕工事のタイミングで行うところが多いのです。ただし前述の通り、外壁は経年劣化の進行が早い傾向にあるので、場合によってはおおむね12年間スパンで行われる大規模修繕工事よりも先駆けて実施の必要が出てくることもあるでしょう。
「大規模修繕工事のタイミングでやるべき」とこだわっていると、マンションの実情と合わないことも出てくるかもしれません。そうなると建物の外観が悪くなることはもちろん、致命的な損傷が発生する可能性もあります。
また、塗料によっても耐用年数は大きく異なり、同じ塗料でもメーカーごとに発表している耐用年数は違うものです。下記に代表的な塗料についてまとめましたので参考にしてみてください。
- アクリル系塗料 3~8年
- ウレタン系塗料 5~10年
- シリコン系塗料 7~15年
- フッ素系塗料 15〜20年
- 無機塗料 10〜25年
劣化状況で分かる外壁塗装の必要性
「外壁塗装は必要なタイミングで実施しなければならない」とは言っても、どのような状態で外壁塗装のサインとなり得るのかを知らなければ、実施タイミングがわかりません。
そこで、下記に外壁塗装における主な劣化症状をまとめました。お住まいのマンションに同様の兆候があるのであれば、まずは施工業者や管理会社などに相談してみることをおすすめします。
劣化の兆候 | 具体的な症状 |
---|---|
チョーキング(白亜化)現象 | 風雪や日光などによって塗料が損傷し、分解してしまうことで起こる症状。マンションの外壁を手で触ると、チョークの粉のように細かい粒子が付着する。 |
塗料の剥がれ | 塗料の一部が外壁から剥がれてしまっている症状。雨などの水分が塗膜に入り込み、崩れてしまっている。 |
クラック(ひび) | 外壁にクラック(ひび)が入っている症状。気温差などで塗料が膨張と収縮を繰り返した結果、ひび割れてしまっている。ひびから水分が入ることで、塗料の剥がれにも繋がりやすい。 |
鉄筋の腐食と露筋 | 露筋とは、外壁から鉄筋の一部が剥き出しになっている症状。コンクリートなど外壁内部の鉄筋が腐食することによって変形し、それによってコンクリートが剥落して外部に露出してしまっている。 |
シーリングの損傷 | シーリングは外壁の隙間を埋めることを目的に用いられるが、ゴム状のシーリングは風雪・紫外線などで劣化して崩落を起こしやすい。 |
マンションの外壁塗装費用
マンションの外壁塗装費用ですが、使用する塗料や外壁の面積、劣化の状態からも変わってきます。
ちなみに国土交通省の「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、工事金額の内訳の内訳のうち平均17.3%が外壁塗装の費用だとされています。
大規模修繕工事全体の費用として、最も一般的なものが「3,000万円〜3,500万円」でした。ここから導き出すと、一般的な建物全体の外壁塗装費用は「519万円〜605万5,000円」ということになります。
なお、国土交通省の調査で得られたサンプルにも偏りがあるため、詳しくは過去の外壁塗装実績などを参考にされることをおすすめします。
マンションの外壁塗装で知っておきたいポイント
ここまでマンションの外壁塗装に関する基本的な情報をまとめてきましたが、実際に外壁塗装を行う上ではもう一歩踏み込んで知っておきたいポイントがあります。この点をしっかりと押さえた上で大規模修繕工事などの計画を立てられると、より納得のいく外壁塗装工事を実施することができるでしょう。
塗料の耐用年数は長いものを選ぶ
上記でも述べてきた通り、外壁塗装は大規模修繕工事とセットで行われることが多い工事です。しかし塗料の耐用年数は物によって異なり、場合によっては大規模修繕工事の実施スパンよりも短いこともあります。
このため、外壁塗装に使用される塗料はできうる限り長いものを選びましょう。例えば、アクリル製の塗料は数ある塗料の中でも安価ではありますが、耐久性に劣り、短い場合だと3年間程度しか持ちません。一方でピュアアクリル塗料などは最長で15年ほど保つと言われており、耐久性に優れています。
当然ながら、耐用年数が長い塗料の方が塗り替え一回に対する費用は高くなります。しかし、安価な塗料を使って高頻度の塗替えをするよりも、大規模修繕工事とセットで行う方が種々の費用を抑えることができるはずです。
塗り替えにかかる工事費用や手間を考えると、塗料ごとの差額はそこまで大きな検討材料ではありません。大規模修繕工事の全体予算(修繕積立金)も鑑みながら、より優れた塗料を使うようにしましょう。
塗り替えのサインを知っておく
上記で劣化症状についてまとめましたが、これらの症状が現れてきたら塗り替えの段階であると考えて良いでしょう。
塗り替えのサインを知っておけば、「むしろ大規模修繕工事のタイミングで外壁塗装は不要だとわかる」「次回の大規模修繕工事を待っていては建物が劣化してしまうので早期に外壁塗装を行う」など、建物にとってベストな判断ができるようになります。
もちろん専門家の目で見なければ判断できないことは多数あるでしょう。しかし、理事会や修繕委員会も工事の必要性を判断できる目を持っていれば、業者任せにならず、自主性を持ってマンションの維持ができるというものです。
押さえておきたい塗り替えのサインは以下の通りです。
- 雨漏り
- コンクリートの剥がれ
- ひび割れが目立つ
- 外壁が色あせている
- カビの発生
具体的な兆候は下記にまとめました。これらは専門家でなくても気づくことができるサインですので、ご自身のマンションでも劣化兆候が出ていないか確認してみましょう。
雨漏り
雨漏りがあるということは、雨水がマンション内部にまで染み込んでいるということです。鉄筋や断熱材、柱などに水がつくと、サビや劣化などにつながる恐れが極めて高いです。最悪、内部が腐食して崩れてしまっているパターンもあるので、このような場合は外壁塗装だけにとどまらず内部の調査・修繕も行いましょう。
コンクリートの剥がれ
鉄筋コンクリートのマンションの場合だと、鉄筋の劣化によって変形して外壁を崩し、外部に鉄筋が露出(露金)しているケースが見られます。上述の通り、外壁の劣化により雨水が侵入して鉄筋が腐食することが主な要因です。
コンクリートが剥がれ落ちているということは、内部の損傷はかなり進んでいます。外壁の剥離を放置していると、崩落を起こして下を歩いていた住民・近隣住民に当たる危険性があります。このようなリスクがありますので、すぐに修繕を行いましょう。
ひび割れが目立つ
意外と気づきにくい塗り替えのサインが、ひび割れです。見える場所のクラックであればすぐに気付けるのですが、人の目が届きにくい高所ほど風雪や紫外線の影響を受けやすいので、大規模修繕工事などの調査で初めてひび割れに判明したというケースもあります。
しかし、ひび割れが大きくなると外壁よりも内部に水が侵入する原因になってしまい、先に述べたような鉄筋の腐食・露金・雨漏りなどにもつながるのです。少しでも気になるクラックがあれば、小規模な修繕でも良いので実施しましょう。
外壁が色あせている
塗りたての頃よりも外壁の色が薄くなっている状態を色あせと呼びます。色あせは、マンションの外観を損ねることはもちろんですが、それ以上にリスクを放置している状態だと言えるのです。
なぜなら、色あせが起きているということは、防水機能を持つ塗料の膜(塗膜)が薄くなってしまっているということだからです。塗膜が十分に外壁に着いていれば、建物内への水の侵入を防ぐことができます。反対に、塗膜が薄くなれば防水性が低下して、浸水のリスクは高くなるのです。
色あせの発生は、紫外線や酸性雨などが主な原因として挙げることができます。塗料に使用される物質が雨や日光によって分離したり、化学変化を起こしたりすることで、容易に流れてしまいます。このような事態を避けるためにも、色あせが気になったら施工業者などと相談してみましょう。
カビの発生
外壁塗装が劣化していると、カビが発生しやすくなります。塗膜がきちんと張られている状態では汚れが付着しにくいのですが、塗膜が少なくなってくると有機物などの汚れが壁につくようになり、カビの原因になるからです。
さらに、カビの発生を放置していると、外壁塗装の劣化速度が早まります。カビが外壁の上に根を張り損傷度合いを進めるからです。また、カビを放置しているとアレルギーなどの病気を引き起こす恐れすらあります。見た目が悪いだけでなく、建物・住民にとって大きなリスクとなります。
カビが発生していたら「塗膜が薄くなっているのだな」と判断し、早急に業者へ相談しましょう。
マンションの外壁塗装工事で起きやすいトラブルとは
外壁に劣化症状が出た場合には早急に対処することをおすすめします。しかし一方で、外壁塗装工事によってトラブルが生じることも見逃すことはできません。
本記事の最後に、マンションの外壁塗装で生じやすいトラブルを2点紹介します。最低限、これらのトラブルについては事前に施工業者と相談して対策を練ること、そして住民・近隣への理解を得ることが大切です。
工事の騒音
外壁塗装工事の際、騒音が発生しやすいです。例えば、仮設工事で足場を組む際に金属音が鳴ったり、タイルなどを除去する際に電動カッターやドリルの音が響いたりします。こういった音が日中継続的に発生してしまうことになるため、大きなストレスになりかねません。
騒音トラブルによる苦情をできる限り抑えるため、まずは作業時間をきっちりと決めて工事に入る前に住民や近隣へお知らせをしておきましょう。また、工事期間についても前もって知らせておくと、理解をしてもらいやすいです。
塗料の臭いやほこり
外壁に使用する塗料の多くは、強い臭いを発します。このため、マンションの住居内はもちろんのこと、近隣の住宅にも影響を及ぼす可能性があるのです。
他にも、古い塗料やタイルを剥がす際に粉塵やほこりが発生します。外壁塗装の期間はバルコニーに洗濯物を干すことができなかったり、換気ができなかったりと、住民の生活に与える影響は少なくありません。
騒音への対策にも通ずるところがありますが、事前に工事期間などを通知することでトラブルを最小限に抑えられるでしょう。
まとめ
本記事では、マンションの外壁塗装工事について詳しくお話しをしました。マンション内部を守る上でも極めて重要な外壁塗装ですので、ぜひこの機会に理解を深め、ご自身の建物に照らし合わせて考えていただければ幸いです。
また、外壁塗装に関してご不明点がありましたら、弊社にお気軽にご相談ください。
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