マンションの大規模修繕工事では、外壁や屋上、共用部以外にも、各部屋のベランダやバルコニーの工事が行われます。各戸、専有部のように扱っているベランダには私物などが置かれているかと思いますが、ベランダの工事中はそういった物もすべて片付けなければなりません。
また、プライベートゾーンであるベランダでどのような工事が行われるか気になるという人もいるでしょう。
マンション大規模修繕工事、長期修繕計画、セカンドオピニオンに関するご相談はこちらまでお問い合わせ下さい。
マンション大規模修繕工事前にベランダ清掃は必要?
大規模修繕工事でベランダの施工が行われる場合、「ベランダは掃除しておいた方がいいのだろうか?」「費用がかかる場合は施工業者持ちになるのだろうか?」などの点について気になっていらっしゃる方もいるでしょう。
本項では、マンション大規模修繕工事前にベランダ清掃が必要なのか、その際にどういった点に気をつけるべきなのかなどを解説します。
結論:修繕前のベランダ清掃・片付けは必要
結論として、大規模修繕工事の際はベランダの清掃を各自行わなければならないです。
ベランダやバルコニーはその部屋の住民しか基本的に立ち入らないため、思い思いに物を置いたり、カスタマイズしたりしているでしょう。しかし、マンションは完全な専有部ではなく「区分所有者が日常の維持管理を行う共用部(専用使用権が認められた共用部分)」という扱いになっています。
このため、すぐに撤去できるような物以外は基本的にベランダに設置してはいけません。そして、大規模修繕工事などが行われる際には各戸が責任を持って施工できるように清掃をしなければならないのです。
ほとんどの場合、ベランダ・バルコニーの扱いはマンションの規約によって定められています。専有部として認められるケースはほぼなく、専用使用権という文言で区分所有者のベランダ・バルコニーの扱いが記載されているのではないでしょうか。
ベランダが専有部扱いにならないのはなぜ?
基本的に区分所有者である住民しか立ち入らないであろうベランダが専有部として認められない理由は、避難経路として使用されることが前提としてあるからです。
ベランダの仕切りは緊急時に破れるようになっていますが、その際に通行を阻害するような物が設置されていては助かる命も助からないかもしれません。このような理由から、マンションのベランダ・バルコニーには専用使用権は認められても、専有部として扱われることはないのです。
ベランダ清掃を行うタイミングは?
長ければ半年ほど実施される大規模修繕工事ですが、その期間中ベランダに私物を全く置いてはいけないということではありません。清掃が必要な期間、私物を置いてはいけない期間については施工業者から別途連絡がありますので、その指示に従えばいいのです。
連絡のあった期間中に私物を置いていると、予定通り修繕工事が実施できません。そうなると全体の工期にも影響を与えかねないので、ベランダ修繕の告知があった際には速やかに私物を片付けましょう。
後ほど、片付ける必要のある私物についてまとめていますので、清掃時にはそちらを参考にしてください。
ベランダ清掃の費用は自費?
大規模修繕時にベランダの清掃が必要であることは解説しましたが、場合によっては業者などを呼んで撤去してもらわなければならない物もあるでしょう。
例えば、BSアンテナや物置などを設置している場合、撤去には費用がかかる場合があります。このような費用は基本的に自費となります。
「大規模修繕工事にかかる費用なんだから、管理組合や施工業者負担にならないの?」と思われるかもしれません。しかし、先述の通りベランダは専用使用権が認められた共用部であり、私物の設置に関しては区分所有者の責任となります。
このため、必要に応じて撤去が求められた際には区分所有者が費用を負担する必要があるのです。
保管場所を確保する必要がある
また、ベランダに置かれていた私物が部屋に置き切れないという場合、区分所有者自ら保管場所を探さなければなりません。中には大きな観葉植物や水槽、倉庫などをベランダに置いている人もいますが、大規模修繕工事に期間中はトランクルームなどを借りて対応できるようにしましょう。
ベランダ施工時は立ち入りできない
また、ベランダの大規模修繕工事が行われている期間中は、ベランダやバルコニーに立ち入りできません。洗濯物などを干すことができないのはもちろん、窓を開けられない期間もあります。この期間中は生活への影響も大きいので、事前に頭に入れておくと良いでしょう。
大規模修繕工事前にベランダ清掃で片付けが必要なもの一覧
ここまでマンション大規模修繕工事におけるベランダ清掃について、注意点などを解説しました。では、具体的にどのような物を片付けるべきなのか?この点について解説していきます。
タイルや人工芝
ベランダタイル・バルコニータイル、人工芝などを設置している場合には、大規模修繕工事前にタイルを剥がしておかなければなりません。防水補修工事などを行う際にベランダの床部分も補修対象になるからです。
ウッドデッキ
タイルや人工芝同様に、ウッドデッキなども撤去しておく必要があります。大規模修繕工事は12〜18年の間隔で必ず実施されるものなので、ウッドデッキなどを購入する際には撤去しやすいサイズ、形状のものを選ぶことをおすすめします。
物置・倉庫
ベランダに物置や倉庫を設置している人もいますが、こういった物も片付けておく必要があります。サイズによっては部屋に置くことができないかもしれませんが、その場合はトランクルームなどを借りて対応しましょう。
物干し竿
ベランダ・バルコニーの物干し竿掛けに、物干し竿を設置しているご家庭も多いことでしょう。長い物では3mほどになる物干し竿なので室内に置くのも邪魔になりますが、やはり大規模修繕工事中には撤去しなければなりません。また、修繕中は施工業者によって竿を固定する物干し竿掛けも撤去されることが多いです。
網戸
施工業者が撤去することも多いですが、区分所有者が網戸の取り外しを求められるケースもあります。特に網戸を取り外すためのネジが室内にあるタイプのマンションでは、住民が取り外さなければなりません。ただ、取り外し自体は難しくなく、ドライバーを使ってネジを外していくだけです。
BSアンテナ・CSアンテナ
衛星テレビを観るため、ベランダにBSアンテナ・CSアンテナを設置している人もいます。大規模修繕工事にあたっては、これらアンテナも取り外す必要があります。アンテナの取り外しが自分でできないという場合は、無理をせずに設置した電気屋などに依頼することをおすすめします。
室外機は撤去不要
ちなみに、エアコンの室外機については区分所有者が撤去する必要はないです。施工業者が室外機を移動させることもありますが、その際の費用負担もありません。ただし、室外機が取り外された場合にはその期間中、エアコンが使用できない可能性があります。使用できない期間などについては施工業者から事前に通知がありますので、大規模修繕工事にあたってのお知らせはしっかりと確認しましょう。
大規模修繕に伴うベランダ・バルコニーの工事内容
最後に大規模修繕で行われるベランダ工事の内容について見ていきましょう。具体的に工事内容を知っておけば、なぜ私物を撤去する必要があるのか、何を撤去すべきなのか等がわかるはずです。
防水補修工事
風雨に晒されることの多いベランダ・バルコニーでは、防水補修工事が必須です。雨が床部分に浸透すると下階に雨漏りが生じることもあるからです。
具体的な工事内容としては、床材に防水性のある塗料を塗り、その上に重ねるようにコーティング用の塗料を塗布していきます。
防水補修工事に用いられることの多い、ウレタン塗膜防水と塩ビ防滑シート貼工事について下記に解説します。
ウレタン塗膜防水の工事
ウレタン塗膜防水とは、ウレタン樹脂を塗り、硬化させることによって防水層を作る工事です。ウレタン樹脂防水工法は安価に実施ができ、一般的な大規模修繕工事でよく用いられています。
また、次に説明する塩ビ防滑シート貼工事とは違い、ウレタン樹脂は液状なので複雑な構造の箇所にも容易に塗布することができます。
塩ビ防滑シート貼工事
塩ビ防滑シート貼工事とは、ポリ塩化ビニル製のシートを床材として貼り付ける工事を指します。ベランダ・バルコニーだけではなく階段や廊下などの防水工事にもよく用いられています。
ウレタン塗膜防水と比べると耐久性・防滑性に優れており、汚れも付着しにくいです。このため、人の往来の多い共用部に使用されることが多いです。また、シート状なのでデザインが施されている物もあります。おしゃれなデザインが求められる場所にも適した防水加工が塩ビ防滑シート貼工事です。
ベランダの外壁塗装
床の防水加工が終わったら、次にベランダ壁面の塗装・補修を行っていきます。壁面にタイルが貼られているマンションの場合には、タイルの張り替えが行われることもあるでしょう。
窓・サッシの補修・交換
経年劣化が見られる窓やサッシも補修・交換が行われます。ただし、区画所有者が日常生活の中で損傷を加えてしまったという場合は、所有者が修理費用を求められることもあるでしょう。
まとめ
本記事では、マンション大規模修繕のベランダ清掃について解説しました。共用部は施工業者が行いますが、プライベートゾーンでもあるベランダは区画所有者が中心となって修繕に備えなければなりません。
負担に感じるかもしれませんが、大規模修繕工事を滞りなく完了させるために私物等の撤去は前もって行い、撤去に労力の要する物は極力置かないように工夫しましょう。
コメント