こんにちは、MRCの平松です。
どれだけ頑丈に造られたマンションでも経年劣化は生じます。このため、適切な時期に大規模修繕工事を実施して住民の安全性や資産価値を守っていく必要があるのです。
マンション大規模修繕工事、長期修繕計画、セカンドオピニオンに関するご相談はこちらまでお問い合わせ下さい。
大規模修繕工事とは
大規模修繕工事とは、マンションの築年数が経過することで発生する経年劣化などを直すことを目的として行われる工事を指します。
ただし、小規模の修繕工事は含まれず、基本的に足場を組んで行われるような大規模な工事を大規模修繕工事と呼びます。
現代は建築基準法が整備され、マンションには最低限の防水性や耐水性が保証されているものの、風雨などによる劣化を完全に防ぐことはできません。
修繕と改修の違い
マンションを保有していると、修繕工事・改修工事という言葉を聞いたことがあるでしょう。
業者においても、この2つを分けて提案することが多く、今後大規模修繕工事を考えている場合には言葉の意味を理解する必要があります。
そこで本項では、修繕・改修の意味について説明をします。
修繕工事
修繕工事とは、建築当時の水準にまで建物の性能を回復させることを目的として工事です。例えば、傷んで使えなくなった扉を直して問題なく使用できるようにするような工事を指します。
改修工事
改修工事とは、建築当時の水準以上に建物の性能を向上させることを目的とした工事です。
建築時から十年も経過すると住宅における技術革新も生じるでしょう。そのような進歩的技術を新たに取り入れるなど、マンションをグレードアップすることは資産価値の向上にも繋がるのです。
大規模修繕工事の費用
国土交通省の調べによると、大規模修繕工事における一戸あたりの費用は以下のようになっています。
- 75万円~100万円:30.6%
- 100万円~125万円:24.7%
- 50 万円~75万円:13.8%
この結果から、大規模修繕工事を検討しているマンションの概ねの予算が計算できるでしょう。
大規模修繕工事の期間
大規模修繕工事の期間は、大きく分けて以下2つに分けられます。
- 計画から着工:最大2年
- 着工から修繕完了:3〜4ヶ月(50戸以下)、4ヶ月〜1年以上(50戸~500戸以上)
計画から着工
大規模修繕工事は共用部を対象とした工事です。このため、住民全体に影響を与えるので、住民からの同意が必要となります。
住民から同意を得るためには、下記の過程が求められます。
- 大規模修繕工事の計画作成
- 大規模修繕工事の計画の説明会開催
- 計画に対する住民の同意獲得
着工から修繕完了
工事期間はマンション周囲に足場が組まれ、作業員が建物内に出入りします。この際バルコニー使用など日常生活に制限がかかることがあるので、住民から理解が得られるように周知徹底を心がけましょう。
大規模修繕工事のメリット
大規模修繕工事は住民の安全を守るための義務的な側面もありますが、実施にあたりメリットもあるのです。本項では、大規模修繕工事のメリットについて解説をします。
日々の暮らしが快適になる
大規模修繕工事の恩恵を最大に受けるのは、マンションの住民です。
経年劣化により性能が低下した給排水システムの回復、電気容量不足の解消など、日々の生活で実感できる改善を肌で感じることができます。
住民の満足度向上は、結果として居住年数の長期化にも繋がります。つまり、大規模修繕工事は貸主・借主にWin-Winの関係をもたらします。
安全性の向上
大規模修繕工事によって、耐震性・防水性の向上など、生活安全性の向上を実現することができます。
また、修繕工事と共に改修工事を行う場合も見られます。この場合、セキュリティシステムの導入やバリアフリー化、宅配ロッカーや共用倉庫の設置など快適性の向上も行うことができます。
修繕工事が定期的に行われることで、マンション性能が担保されていることが伝わり、住民の安心感にも繋がります。
資産価値の維持
大規模修繕工事によって建築当時の性能に回復することで、マンションの資産価値を維持することができます。建築当時は同程度のマンションであったとしても、修繕頻度が低いものと高いもので比べると時間が経つにつれてグレードの差は大きくなります。
大規模修繕工事の内容
大規模修繕工事と一口に言っても、いくつかの作業に細分化することができます。
仮設工事
仮設工事とは、現場事務所や足場、メッシュシートなどの設置を行う工事です。これらは施工に必要な設備であり、住民・作業員の安全性を確保するために必要な作業となります。
下地補修工事
下地補修工事とは、外壁・内壁・天井などに生じた劣化(ひび割れなど)を補修する工事です。下地工事の出来は、マンションの耐久性・防水性などにも直結します。
タイル補修工事
タイル補修工事とは、壁面のタイルの状況を目視・打診で確認し、補修を行う工事です。タイル補修を行うことは、外観の整備以外にも雨水の侵入防止やタイルの落下防止などにも寄与します。
シーリング工事
シーリング工事とは、外壁の間やサッシ周辺に使用されるシーリング材を交換する工事です。シーリング材を交換することで、雨水の帽子や断熱性の向上などが期待できます。
外壁塗装工事
外壁塗装工事とは、下地の上から新たに塗料を塗る工事のことです。現在塗られている塗料の状態によって、重ね塗り・除去後に塗装のどちらかを行います。
鉄部塗装工事
鉄部塗装工事とは、階段や手すり、扉などに使用されている鉄部の錆を落とし、新たに塗料をぬる工事を指します。塗料を塗ることで外観が整備されることはもちろん、耐久性の向上にも繋がります。
防水工事
防水工事とは、マンションのあらゆる箇所において水の侵入の可能性がある部分に必要な防水施工を行うことを指します。防水加工を行うことで雨漏りなどを防げるとともに、浸水による劣化を防ぎマンションの寿命を大幅に伸ばすことが期待できます。
また防水工事には塗膜防水やシート防水など、様々な種類がありますので、設備点検報告書などを確認しながら最適な方法で施工しましょう。
その他
大規模修繕工事は10年、15年に一度の大掛かりな工事になるため、劣化箇所の修繕に加えて機能の改善・最新設備の導入なども検討しましょう。
近年では、バリアフリー化やオートロックの導入、宅配ボックスの設置などが人気です。このような改修工事は費用がかかりますが、マンションの資産価値を高めてくれます。
修繕工事の実施目安時期
修繕工事対象 | 目安時期 | 詳細 |
---|---|---|
鉄部塗装 | 築5~8年 | この時期は、経年劣化で鉄部のサビなどの兆候が見られます。建物点検報告書を確認し、大規模修繕工事の計画を立てましょう。 |
屋上、屋根、給排水ポンプ | 築10年 | マンション診断を受け、全体の状況を確認しましょう。大規模修繕工事に向けた修繕委員会を立ち上げる時期です。 |
電灯設備、バルコニー、エントランス、インターホン、消火栓、階段など | 築11〜15年 | 大規模修繕工事の1回目が行われる時期です。この時期に行うことで劣化を止め、長期的に見て費用を抑えることができます。また、長期修繕計画の見直しも忘れず実施しましょう。 |
機械式駐車場、火災感知器など | 築16〜20年 | 設備点検報告書を確認し、劣化兆候が見られる設備の修繕を行いましょう。 |
電灯設備、バルコニー、エントランス、インターホン、消火栓、階段など | 築21〜25年 | 大規模修繕工事の2回目が行われる時期です。この際にも長期修繕計画の見直しが必要です。 |
エレベーター | 築26〜30年 | エレベーターなどの設備を点検・修繕する時期です。設備点検報告書を確認し、実施しましょう。 |
電灯設備、バルコニー、エントランス、インターホン、消火栓、階段など | 築31〜40年 | 大規模修繕工事の2回目が行われる時期です。この際にも長期修繕計画の見直しが必要です。 |
大規模修繕工事に設計監理方式を導入するメリット
設計監理方式とは、設計事務所や建築士が在籍する建設会社などに建物の診断・修繕計画・業者選定などを委託する方式です。
別の方式として責任施工方式というものがありますが、こちらは管理組合が業者を選定し、その業者によって建物の診断・修繕計画・工事が行われる方式です。
どちらにもメリット・デメリットはありますが、当社では大規模修繕工事に設計監理方式の導入をおすすめしています。その根拠として、下記に設計監理方式のメリットを解説します。
工事内容が客観的に定められる
大規模修繕工事に設計監理方式の導入するメリットとして、工事内容を客観的に決定できる点が挙げられます。
診断・設計と工事を別業者が行えば、それぞれの仕事に対して相互的なダブルチェックが行われるからです。
例えば、着工後も建築士が現場監理をするため、施工会社によるミスや意図的な手抜き工事などを防止できます。逆もまた然りです。
大規模修繕工事は費用も大幅にかかるため、確実な手段で工事を進めるべきです。
競争入札のため予算が抑えやすい
設計監理方式の場合、工事業者の入札が行われます。その際、見積もりや施工計画が提出されるため、内容と予算を比較しやすいのです。
また、設計事務所が提出された施工計画書から予算の正当性だけでなく、コストパフォーマンスなども加味して選定してくれます。
建築士事務所が工事監理を行うため、質の高い修繕へとつながる
前述の通り、設計事務所など工事業者とは別の第三者が現場の監理に入るため、工事の質が厳しくチェックされます。
工事業者だけの場合、悪意がなくとも主観的な作業内容になる傾向は否めません。客観的に施工計画が決められた通り行われているかどうかも含め、質の担保を別業者が行ってくれるのは設計監理方式のメリットです。
設計段階で意向を取り入れやすい
設計段階から工事業者に一任すると設計〜着工までの過程に管理組合が介在しにくいのが現状です。また、介在できても意図を具体的な施工案に提案することは難しいです。
一方、建築士事務所など診断・設計に特化した業者を採用することで管理組合と密なコミュニケーションが生まれ、意図が組まれやすくなります。
また、意図を元に現実的な施工計画を具現化し、それを工事業者に伝えてくれるのです。
第三者が介入することで透明性が増す
建築士事務所と工事業者を分けることで互いの作業にダブルチェックが入り、透明性が増します。これは設計監理方式における最大のメリットと言えます。
しかし、場合によっては設計事務所と工事業者が癒着しており、作業内容の明確性・客観性が損なわれるケースもあります。
このような事態を避けるためにも、公正かつ信頼性の高い建築士事務所に依頼することが重要です。当社では一切そのような行為は致しません。ご不安がある方は、お気軽にご相談ください。
大規模修繕工事は設計監理方式を導入しよう
本記事では、大規模修繕工事について詳細に解説を行いました。住民の安全性や資産価値の維持のためにも、定期的に大規模修繕工事を行いましょう。
また後半で触れた通り、大規模修繕工事には設計監理方式の導入をおすすめしています。
一度ご相談ください。
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