大規模修繕工事の相場を統計をもとに解説!工費を下げる方法も6つ紹介

こんにちは、MRCの平松です。

大規模修繕工事の相場については国土交通省が発表している数値もあり、修繕工事を実施する前に確認することをおすすめします。

また、工事費をできるだけ下げたいという方に向けて、リスクなく工事費を下げるコツを紹介します。

「安価な業者を選ぶ」「工事内容を管理組合の判断で削る」などはリスクが高く、おすすめできません。本記事では、専門家の目から見ても正しい「工事費を削減する方法」を6つ紹介しますので、こちらも併せてお読みください。

マンション大規模修繕工事、長期修繕計画、セカンドオピニオンに関するご相談はこちらまでお問い合わせ下さい。

大規模修繕工事の相場

大規模修繕工事 相場

国土交通省の資料をもとに、戸あたり・床面積あたりの工事金額を解説

大規模修繕工事の全体費用

まずは大規模修繕工事の全体費用から紹介します。

国土交通省が平成29年5月から7月にかけて実施した調査(『マンション大規模修繕工事に関する実態調査』を参照)によると、大規模修繕工事の金額は、修繕工事をこれまで何度行ってきたかによっても変動するようです。

理由としては、工事ごとに重点的に修繕を行う箇所が異なるためです。部位によって劣化の進行度が違うので、2回目では給水設備の修繕箇所が多く、3回目では建具・金物などの修繕が増えるということもあります。

下記に大規模修繕工事の回数ごとに、工事金額の比率を掲載します。ご自身の建物の条件に合う項目を参考にしてください。

大規模修繕工事 相場

戸あたりの大規模修繕工事費用

先ほどは大規模修繕工事の全体費用を紹介しましたが、マンションのタイプ・規模などによっても費用は異なります。

極端な例を出せば、100世帯以上が生活するタワーマンションと20世帯程度が入居する小型・中型マンションで、例え修繕工事の回数が同じでも工事費用は数倍以上変わるはずです。

そこで、まず参考にしたいのが戸あたりの大規模修繕工事費用です。お住まいのマンションの戸数が分かれば、おおむね大規模修繕工事にかかってくる費用の範囲が算出できます。

また、戸あたりの費用についても前述の国土交通省の調査により、中央値や平均値が分かっています。

大規模修繕工事の回数戸あたりの修繕費用
下位25%中央値上位25%平均値
1回目 (n=367)73.5 万円/戸98.7 万円/戸117.9 万円/戸100.0 万円/戸
2回目 (n=201)76.2 万円/戸95.6 万円/戸119.8 万円/戸97.9 万円/戸
3回目以上 (n=126)55.1 万円/戸77.3 万円/戸105.7 万円/戸80.9 万円/戸

大規模修繕工事の戸あたり費用中央値は回数を重ねるたびに減少していることが分かります。

回数を重ねるたびに安くなるという見方もできますが、何度も修繕工事が実施されたような古いマンションの方が費用が安価で、新しいマンションほど修繕にお金がかかると考えることもできます。

いずれにせよ、現在のマンションの状況と照らし合わせることで一定の費用相場が見えてくるはずです。

床面積あたりの大規模修繕工事費用

大規模修繕工事の費用を床面積から導き出すこともできます。

大規模修繕工事の回数床面積あたりの修繕費用
下位25%中央値上位25%平均値
1回目 (n=367)8,483.7 円/m²10,647.9 円/m²13,426.4 円/m²13,095.9 円/m²
2回目 (n=201)9,144.7 円/m²11,752.4 円/m²15,538.8 円/m²14,634.9 円/
3回目以上 (n=126)7,530.8 円/m²10,626.4 円/m²13,523.3 円/m²11,931.0 円/m²

大規模修繕工事の費用を下げる方法

大規模修繕工事 相場

ここまで国土交通省の資料をもとに、大規模修繕工事の相場を紹介しました。

相場を知ることで大規模修繕工事の規模に見合った費用範囲が分かり、法外な値段の見積もりを一方的に受け入れるようなケースは避けることができます。

また工夫次第で大規模修繕工事の費用を下げることが可能です。本項では、工事の質を保ちつつも着実に工事費を下げる方法についてご紹介していきます。

マンションの現状を正しく理解する

大規模修繕工事を迎えるに際して、お住まいのマンションの現状を正しく理解するところから始めましょう。

修繕工事を行う前に建物の調査(打診調査など)が行われるのが通常です。場合によっては依頼する前提で施工業者が無料で実施する簡易的な調査もありますが、費用がかかってでもしっかりと建物の診断を行っていただくことをおすすめします。

理由としては、簡易的な診断では建物の状態が明らかにならず、大規模修繕工事の内容を適切に決めるのに情報量が不十分の可能性があるからです。

建物の診断をもとに工事内容が決まり、それに従って工事費用が決まります。本当に修繕が必要な箇所と、そうでない箇所を明確にすることで工事費が下がることも少なくないのです。

そもそも建物診断は費用の削減を目的として行うものではありませんが、結果として必要最低限の修繕のみで良くなり、大規模修繕工事の費用が下がる可能性があります。

実施時期の見直し

「大規模修繕工事の実施時期は、管理会社の提案通りにしている」もしくは「長期修繕計画書に従っている」という管理組合の声も多いです。

もちろん組合内に修繕に関する知識に精通する方がいなければそこに従うのは当然なのですが、マンションの劣化進行具合によっては大規模修繕工事の実施スパンが短い場合もあります。

しかし管理会社などは建物一棟一棟の現状を詳細に把握しているわけではありませんから、紋切り型で大規模修繕工事の期間を決めがちです。その上、診断調査が「修繕を実施する前提」で行われるものであれば、正しい周期で工事を行うことはできません。

ちなみに、国土交通省が平成16年に発表した『改修によるマンションの再生手法に関する マニュアル(令和3年改訂版)』では、大規模修繕工事の周期は通常12年〜15年とされています。

「通常」と称される周期ですら3年の範囲があるので、決め打ちで「12年周期」「10年周期」といったように提案される大規模修繕工事は、実施する必要性の有無から問い直す方が良いでしょう。

これまで12年で行っていた工事を15年周期に変えるだけでも、組合側の修繕積立金の負担も減りますし、長期的に見ると大幅な工事費削減につながります。

発注先の業者の見直し

大規模修繕工事の業者選定は、管理会社などからの斡旋か、相見積もりで選定する方法が多いです。後者の場合、見積もり額が選定の大きな要素になりがちですが、費用だけで決定することはおすすめできません。

当然、不要な工事内容を追加することによる嵩増しで見積もり金額が高額になっている業者は対象外ですが、見積もり額が高い理由として、高い実績や技術力、アフターサービスや付随する価値が含まれている場合にはその点も注目しましょう。

工事費が高くとも、工事の品質が高く結果として次回の大規模修繕工事の時期が遅れたのであれば、長期視点ではコストパフォーマンスが高いです。

反対に、見積もり額が他の業者よりも低い場合は「安かろう悪かろう」になる可能性もあります。修繕が適切に行わなければ建物に致命傷が及ぶ危険性もあり、結果として追加の修繕が必要になったり、建物の資産価値が低下したり、良いことはありません。

相場よりも安すぎる業者には注意

これから大規模修繕工事の業者選定をするという方には、「不適切コンサルタント」と呼ばれる存在が社会問題になっていることも念頭に置くことをおすすめします。

不適切コンサルタントとは、施工業者と癒着して高額なバックマージンを得るコンサルティング会社です。設計監理方式ではコンサル業者が施工業者の選定を支援しますが、癒着関係のある業者を管理組合に選ばせ、業者から賄賂をもらうような事態が多発しているのです。

コンサル業者の仕事は管理組合の支援と工事品質の担保にあり、理論上は設計監理方式でその2つが達成されるはずです。しかし、元々管理組合を騙して高額な利益を得ようとする業者が高品質な工事を保証してくれる可能性は低いのです。

設計コンサルタント会社の選定時において、安価な見積もり額は魅力的です。しかし、その心理を逆手にとろうとする業者がいることは知っておくべきです。

発注方式の見直し

大規模修繕工事を発注する際には、施工業者のみに依頼する「責任施工方式」と、コンサル業者・施工業者の2社に依頼する「設計監理方式」があります。(他にもCM方式がありますが今回は割愛します)

一般的には、設計監理方式の方が依頼する会社数が増えるので高額になります。しかし、適切な仕事をするコンサル業者をパートナーにできれば、責任施工方式より設計監理方式の方が工事の質が上がります。

すると大規模修繕工事の周期が伸び、結果として工事費用が平均して安くなる場合があります。

また、コンサル業者は施工業者が出した工事計画の確認もしてくれます。施工業者によっては工事費の嵩増しを目的に、まだ必要のない箇所まで工事内容に組み込んでいる場合もあるのです。

こういった無駄を見抜き、工事内容を是正してくれるので、結果として設計監理方式の方が安価になったケースもあります。

アフターサービスを活用する

業者によっては、大規模修繕工事にアフターサービス・アフター点検を提供している会社もあります。予算との相談も必要ですが、保証期間が長い業者を選ぶことで、事後の修繕費用を削減することができるのです。

必要に応じて小・中規模の修繕を実施する

最後に重要な点として、大規模修繕工事の間に必要に応じて点検と小規模・中規模の修繕工事を実施することをおすすめします。

特にひび割れや雨水の侵入などを放置していると、マンションの根幹部分に損傷を起こして、次回の修繕工事で修繕積立金では賄えないほどの費用を生じさせる恐れもあるのです。

反対に、こまめに点検と修繕を繰り返せば大規模修繕工事の実施時期を遅らせることができたり、工事の規模を縮小できる可能性もあります。こうなればトータルでかかる修繕費用の削減も可能です。

まとめ

大規模修繕工事はマンションの資産価値を保ち、住民の生活を守るために必要不可欠なものです。そのため「できるだけ安上がりに済ませよう」という方向で計画を立てることはおすすめできません。その判断は結果として資産価値を下げ、住民の居住年数が低下し、経済的な損失にもつながります。

一方、管理組合側がどれだけ工事品質を上げようとしても、不正コンサルタントの存在や工事内容の嵩増しなど、不正が働かれるリスクもあるものです。

これらのリスクを避ける第一歩は、良いパートナーを見つけることです。もし修繕工事で頼れる相談先がいないのであれば、弊社へお気軽にお声がけください。

マンション大規模修繕工事、長期修繕計画、セカンドオピニオンに関するご相談はこちらまでお問い合わせ下さい。

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