こんにちは、MRCの平松です。
建物に住み続ける上で不可欠なのが改修工事です。
普段の生活では「改修」という言葉に馴染みが薄いため、次のような悩みが生じるかもしれません。
「マンションを改修しようと思っているけど、具体的に何をすればいいのかわからない」
「修繕や改修、リフォームなど、似たような言葉があり、どれが適しているのかよく分からない」
この記事では、改修の意味や改修と似た用語の違い、改修の具体的な例やメリットまでをわかりやすく解説します。
マンション大規模修繕工事、長期修繕計画、セカンドオピニオンに関するご相談はこちらまでお問い合わせ下さい。
改修とは|似ている用語も解説
改修の意味
改修工事は、建物や施設に対して行われる工事の一形態であり、通常は修繕や改善、近代化を目的としています。これは、建物や施設が経年劣化や損傷、機能的な制約に直面している場合に、その状態を向上させるために実施されます。
国土交通省が平成16年に発表した「改修によるマンションの再生手法に関するマニュアル」には、以下のようにマンションの改修の重要性が記載されています。
マンションの経年に伴う劣化や不具合に対しては、大規模修繕等の計画修繕を適切に実施していくこ
とが必要であり、それにより、マンションの劣化を防止することができます。しかし、修繕だけではマンションの性能の維持・回復しか実現することができません。マンションに求められる性能・機能は、住まい方の変化や設備機器の進歩等により年々高まっており、近ごろの新築マンションの性能や居住性は著しく向上しています。これに伴い、高経年マンションでは性能・機能面での陳腐化が進行し、資産価値が低下することにもなりかねません。こうしたことから、高経年マンションの質及び価値を長持ちさせていくためには、修繕による性能の回復に加えて、現在の居住水準・生活水準に見合うようマンションの性能をグレードアップし、住みよいマンションにしていくことが重要になります。 なお、一般的には、性能・機能をグレードアップさせる工事のことを「改良工事」といい、修繕及び改良により建物全体の性能を改善する工事のことを「改修工事」といいます。
このように修繕及び改良により建物全体の性能を改善する工事のことを「改修」と呼びます。
改修と似ている用語表
修繕 | 物や設備などが損傷や劣化した状態を改善するために行われる修理や補修のこと。 |
改装 | 建物や部屋、空間などをデザインや機能の向上を目的として変更すること。 |
改築 | 建物を基本的な構造や形態を変更すること。増築や大規模な建物の一部を取り壊して新たな構造物を建て直すなど、大規模で本質的な変更を伴う作業を指す。 |
リフォーム | 物や部屋、住宅などを改善し、新しくするための改修や修繕工事。新しい仕様やデザインの導入、既存の損傷した箇所の修理や補修が行われることが一般的。 |
リノベーション | 建物や住宅、部屋などを新しくし、改良するための広範で包括的な改修プロセス。新しいスタイルや最新の設備を導入し、建物や空間の効率性や快適性を向上させることが目的。 |
改修工事の具体例
次に、改修工事の具体的な例を解説します。
躯体改修工事
躯体修繕工事とは、ひび割れやコンクリートの浮きなど、建物全般の劣化箇所を修復する作業です。
基礎にひび割れや損傷が見つかった場合、ますます寿命を延ばすために、まず基本的な構造の修繕から手をつける必要があります。
これにより、建物の耐用年数が向上し、劣化による事故を未然に防ぎ、住民の安全性が確保されます。
外壁改修工事
外壁改修工事は、建物の外壁を修理するための工事です。
外壁は経年劣化すると、壁やタイルの一部が剥落する可能性があり、これが建物全体の安全性だけでなく、住民や通行者の安全をも脅かすこととなります。
また、劣化が進むにつれて、その修理工事の規模も拡大し、コストも増大します。そのため、劣化が進む前の段階で修理工事を行うことは、経済的な観点や安全性の観点からも推奨されます。
シーリング改修工事
シーリング改修工事は、改修箇所は既存のシーリングの劣化具合や工事の範囲によって異なりますが、主に外壁コンクリートの接合部やタイルの隙間、コンクリートと玄関ドアやサッシの間など、部材同士の接合部に生じる隙間に、柔軟なゴム状のシーリング材を埋めていくのが一般的です。
屋根防水改修工事
建物の雨漏りを防ぐための作業である防水改修工事は、劣化した防水層を補修するプロセスです。
この作業により、資産価値を維持し、快適な居住空間を保つことが可能です。
防水改修工法にはさまざまな種類や目的が存在し、改修工事では材料の選定や具体的な施工手法も非常に重要です。
ドア改修工事・サッシ改修工事
ドア改修工事とサッシ改修工事は、建物の出入り口や窓に関する補修や改良工事を指します。これらの工事は建物の安全性や耐久性の向上、エネルギー効率の向上を目的としています。以下にそれぞれの工事について簡単に説明します。
ドア改修工事
ドア改修工事は、建物の出入り口に設置されているドアに対する補修やアップグレードを指します。これには以下のような内容が含まれます。
- 補修・交換: 既存のドアに損傷がある場合、補修や新しいドアへの交換が行われます。これにより、セキュリティや気密性が向上します。
- 自動ドアの導入: 施設の利便性向上のため、自動ドアの導入が行われることがあります。特に商業施設や公共施設で見られます。
- バリアフリー対応: バリアフリーへの配慮として、車椅子の利用者や高齢者に対応するための改修が行われることがあります。
サッシ改修工事
サッシ改修工事は、建物の窓や窓枠に関する補修や改良工事を指します。主な内容は以下の通りです。
- ガラスの交換: 劣化や損傷したガラスの交換が行われ、断熱性や防音性を向上させます。
- サッシの補修: サッシのフレームや金具に損傷がある場合、補修が行われ、耐久性を確保します。
- 断熱材の追加: エネルギー効率の向上を図るために、断熱材の追加や改良が行われることがあります。
金物類改修工事
金物類改修工事は、建物や施設において使用される金物類(金属製の部品や装置)に対する補修や改善工事を指します。
これには様々な要素が含まれ、建物の安全性や耐久性を確保することが目的です。以下に、金物類改修工事の一般的な内容をいくつか挙げます。
- 扉や窓の金物の補修:ドアや窓の金物が劣化したり、動作がスムーズでない場合に、補修や交換が行われます。これにより、開閉が円滑でセキュリティが向上します。
- 手すりや階段の手すりの補修:手すりや階段の手すりが傷んでいる場合、補修が必要です。これは安全性を確保するために重要です。
- 屋根や外壁の取り付け金物の補修:屋根や外壁に取り付けられている金物が錆びたり緩んだりしている場合、補修が行われ、建物全体の安定性が確保されます。
- 門やフェンスの金物の改修:門やフェンスに使われている金物が劣化している場合、新しい金物への交換や補修が行われ、セキュリティや外観の向上が図られます。
- 金物の塗装や表面処理:金物の錆びを防ぐために、塗装や表面処理が行われることがあります。これにより、金物の寿命が延び、外観も美しく保たれます。
- 非常口や防犯設備の金物の点検と補修:非常口や防犯設備に使用される金物は定期的な点検が必要であり、必要に応じて補修が行われます。
改修のメリット4選
建物や施設の改修にはさまざまなメリットがあります。
これらのメリットは、建物の状態を向上させ、機能的で快適な環境を提供するだけでなく、資産価値の向上や法規制への適合などにも寄与します。
以下に、改修の主なメリットをいくつか挙げてみましょう。
耐久性と安全性の向上
改修工事により、建物の構造や設備が強化され、耐久性と安全性が向上します。これにより、長期的な健全性が確保されます。
エネルギー効率の向上
施設の断熱性やエネルギー効率を向上させる改修工事は、エネルギーコストの削減につながります。結果として、維持費用が低減されます。
快適性の向上
リフォームや内装の改修により、居住環境が快適で機能的なものになります。新しい設備や機能の導入により、住人や利用者の生活品質が向上します。
資産価値の向上
改修工事は建物や施設の外観や機能を向上させ、これにより資産価値が向上します。将来的な売却や賃貸において有利な条件をもたらします。
法規制への適合
建築基準法や地方自治体の規制が変わった場合、それに適合するための改修工事が必要です。これにより、法的なリスクを回避できます。
老朽化や劣化の防止
定期的な改修工事は、建物の老朽化や構造的な劣化を防ぎます。これにより、将来的な大規模な補修や修繕の必要性を低減できます。
新しい技術や設備の導入
改修工事を通じて、新しい技術や施設が導入されることがあります。これにより、最新の機能や利便性を享受できます。
これらのメリットは、計画的で効果的な改修工事により、建物や施設の全体的なパフォーマンスと価値を向上させることができます。
まとめ
本記事では、似たような言葉が多いことから、混同されることの多い『改修工事』について詳しく解説しました。
建物は、単に存在しているだけで、絶えず劣化が進行しています。そのため、どの建物であっても、長寿命にするためには、定期的な点検を行い、劣化や損傷が軽微な段階で修復を行っていくことが極めて重要です。
ただし、細かい修繕を行っていても、時間が経過すれば、元の機能を完全に回復させることが難しくなることがあります。そうした場合に実施されるのが、『大規模修繕』や『大規模改修』と呼ばれる工事です。
そして、改修工事は、単なる修繕だけでなく、「工事によって元の機能・性能を向上させる」ことも目指しています。この記事で述べたように、国土交通省の見解によれば、「修繕工事(リフォーム)+改良工事(グレードアップ)」が『改修工事』となり、より良い建物を目指すための工事と位置づけられています。
もちろん、改修工事と言っても、さまざまな手法が存在し、必要な工事は建物の状態によって異なります。例えば、工場や倉庫の改修工事は、建物の資産価値を維持するだけでなく、向上させることにもつながります。したがって、適切なタイミングで、建物に適した工事を施すための体制を整えておくことが重要です。
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