こんにちは、MRCの平松です。
たとえどんなに丈夫に建てられたマンションであっても、絶え間ない自然の力により徐々に劣化していきます。このような経年変化に対処し、建物の構造的な安全性と価値を守るためには、定期的な修繕が不可欠です。
特に、建築物全体を対象とした広範囲にわたる修繕作業、いわゆる大規模修繕は、その規模と実施のタイミングに応じて様々な対策が講じられます。大規模修繕を成功させるためには、その目的と必要性を深く理解し、適時に計画的な対応を行うことが重要となります。
この記事では、マンションの修繕工事の内容・必要性・周期・費用などを解説します。
マンション大規模修繕工事、長期修繕計画、セカンドオピニオンに関するご相談はこちらまでお問い合わせ下さい。
マンションの大規模修繕工事とは?
大規模修繕工事は、マンションやビルなどの建物が長期にわたり使用されるにつれて必要となる、大掛かりな修繕や更新を指します。
これには外壁や屋根の塗り替え、給排水設備の更新、エレベーターの全面的な改修、共有部分の大幅なリニューアルなどが含まれます。
目的は、建物の機能や安全性を維持・向上させ、資産価値を保持することにあります。この工事は数年に一度の周期で計画され、修繕積立金を用いて賄われることが一般的です。
大規模修繕工事は必要?
大規模修繕工事は、以下の理由から必要です:
- 建物の老朽化に伴う安全性の確保:時間とともに劣化する建物の構造を補強し、居住者の安全を守る
- 機能性の向上:最新の設備への更新や改善を通じて、建物の機能性を高める
- 住環境の質の向上:外壁の塗り替えや共有スペースのリノベーションなどにより、居住環境を改善する
- 資産価値の維持・向上:定期的なメンテナンスと修繕により、建物の資産価値を保持し、市場での競争力を維持する
以下で詳しく解説します。
建物の老朽化に伴う安全性の確保
建物が経年劣化すると、その構造の安全性が低下します。大規模修繕工事によって、劣化した建物の部分を修理または強化し、地震や台風などの自然災害に対する耐性を高めることができます。これは、居住者の生命と財産を守るために不可欠です。
機能性の向上
時代と共に、建物の設備や機能は陳腐化します。大規模修繕工事を通じて、最新の設備に更新することで、エネルギー効率の改善、居住性の向上、そして快適な住環境の提供が可能になります。
住環境の質の向上
修繕工事には、外壁の塗り替えや共用スペースの美化など、居住者の日常生活に直接影響を与える作業が含まれます。これらの改善により、住環境の質が向上し、居住者の満足度が高まります。
資産価値の維持・向上
定期的なメンテナンスと大規模修繕を行うことで、建物は長期にわたってその価値を維持することができます。これにより、将来的に物件を売却する際にも、高い評価を得られる可能性が高まります。
修繕工事と改修工事の違い
修繕工事と改修工事の違いについて、以下にまとめました。
区分 | 定義 | 目的 | 内容 | 実施例 |
---|---|---|---|---|
修繕工事 | 建築当時の水準まで機能・性能を回復させる工事 | 傷んだ箇所の修理や部材の取り替えで問題なく使用できる状態に回復させる | 小規模な修繕から大規模修繕まで | 日々の不具合修理、大規模修繕工事 |
改修工事 | 建物全体の機能・性能面を進化させる工事 | 機能の維持・回復に加え、居住性の向上や性能のグレードアップ | 設備の更新や追加、性能の向上 | 設備のグレードアップ、居住性の向上工事 |
マンション大規模修繕工事の費用は?
大規模修繕工事の費用は、マンションの規模、建物の状態、修繕の範囲、使用する材料や技術の種類によって大きく異なります。一般的に、外壁塗装、屋根修理、共用部の更新、エレベーターの全面改修などが含まれます。
費用は数百万円から数千万円に及ぶことがあり、具体的な金額は専門家による建物診断後に策定される修繕計画に基づいて決定されます。
以下は国土交通省が発表した「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」にある、マンション大規模修繕工事の回数と戸あたり工事金額の関係です。
修繕工事回数 | 戸あたり工事金額で最も多い金額 |
---|---|
1回目 | 100〜125万円/戸 |
2回目 | 75〜100万円/戸, 100〜125万円/戸 |
3回目以上 | 75〜100万円/戸 |
適切な計画と予算配分により、建物の価値を維持し、長期的なコストを抑えることが可能です。費用についてはマンションの状態によって大きく異なるため、施工業者などに相談しましょう。
マンション大規模修繕工事の期間は?
マンションの大規模修繕工事の期間を2つに分けることができます。プロジェクトの計画段階と実際の工事フェーズです。
工事が主に共用エリアに焦点を当てているため、住民の承認なくしてプロジェクトを前進させることは難しいです。承認を得るためには、計画の詳細を共有し、理解を促すためのミーティングが不可欠です。この準備段階には通常1から2年かかります。
一方、工事開始後は日常生活に多少の制限が伴う可能性があり、このフェーズは50戸未満の場合約3から4ヶ月、50戸以上の場合は少なくとも4ヶ月を要します。
マンション大規模修繕工事の周期は?
マンション大規模修繕工事は何年に一回の周期で実施すべきなのでしょうか。
以下は、前述の国土交通省資料にある、マンション大規模修繕工事の平均修繕周期です。以下を参考にしてみてください。
周期 | 件数・割合 |
---|---|
11年目 | 26件(4%) |
12年目 | 122件(18.8%) |
13年目 | 150件(23.1%) |
14年目 | 100件(15.4%) |
15年目 | 72件(11.1%) |
16年目 | 42件(6.5%) |
マンションの大規模修繕工事の内容・流れ
大規模修繕工事は一般的に以下のステップで行われます。
- 計画段階: 建物の現状評価と必要な修繕範囲の特定。
- 設計段階: 修繕工事の詳細設計とスケジュールの策定。
- 入札・契約段階: 施工業者の選定、入札手続き、契約。
- 工事前の準備: 住民への通知、工事に伴う生活への影響の最小化策の準備。
- 実施段階: 修繕工事の実施、品質管理、進捗管理。
- 完了・引き渡し: 工事完了の確認、住民への報告、必要な書類の引き渡し。
- アフターサービス: 工事後のフォローアップ、不具合があった場合の対応。
以下、各ステップについて簡単に説明します。
計画段階
この段階では、専門家による建物の全体的な評価が行われ、修繕が必要な箇所が特定されます。建物の構造、外壁、屋根、水回りなどの検査を通じて、修繕の範囲と優先順位が決定されます。
設計段階
特定された修繕範囲に基づき、詳細な工事計画とスケジュールが策定されます。この段階では、工事の詳細な仕様、必要な材料、期間などが計画され、予算の見積もりが作成されます。
入札・契約段階
工事計画が完成すると、適任の施工業者を選定するための入札手続きが行われます。入札を通じて業者が選定された後、工事の契約が締結されます。
工事前の準備:
工事開始前には、住民への通知が行われ、工事による影響を最小限に抑えるための準備が行われます。これには、工事のスケジュール、安全対策、生活上の注意点などが含まれます。
実施段階
工事が開始され、計画に従って修繕が進められます。この段階では、施工の品質管理と進捗管理が重要となり、計画通りに工事が進むように監督されます。
完了・引き渡し
工事の完了後、最終的な検査が行われ、問題がなければ工事は正式に完了となります。工事完了後は、住民への報告と必要な書類の引き渡しが行われます。
アフターサービス
工事完了後も、工事に関連する不具合が発生した場合には、施工業者によるフォローアップが提供されます。これには、不具合の修正や、必要に応じた追加作業が含まれます。
まとめ
長期にわたって同一マンションに居住する場合、約13年から16年の周期で数回の大規模修繕を体験することになります。
新築時には即座に修繕が必要ではありませんが、将来的には修繕積立金が不足しないよう計画的に管理する必要があります。
中古マンションを検討している方は、今後の大規模修繕のスケジュールや積立金の状況を確認することが重要です。
また、大規模修繕では予期せぬ遅延や、工事後の不具合が発生する可能性があり、信頼できる施工業者の選定が重要です。区分所有者として、大規模修繕に積極的に関わり、共同で資産を守る努力が求められます。
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